エルブルース登山と氷河スキー其のA〜氷の斜面を越えて〜
グルジア国境付近でのスキー三昧の日々を終えた僕を待っていたのは、エルブルースの
氷の斜面だった。ガチガチに凍ってかなり危険な状態らしい。
果たして氷の斜面を克服して、僕は頂上まで至れるのだろうか

AZAU谷からエルブルース頂上への地図。下端はチュゲトマウンテン


登山基地のバレルハットまで雪上車で入る


傾斜は緩くても転ぶと止まらない氷斜面


ルートを良く見て氷を避ける


途中からはやや急な斜面のトラバース


唯一の平坦地サドルで大休憩


天気は持ってくれた


頂上直下の広い稜線を行く


ヨーロッパ最高点には、何故か凍ったギターあり


ガスの中の下山


ここまで降りれば一安心


バレルハットからの下山でもスキーを楽しめた


バレルハットよりのエルブルース頂上、赤線が今回ルート、青線がノーマルルート



  エルブルーススキー登山其のA〜氷の斜面を越えて〜

(日付)2009年3月30日(月)〜4月12日(日)
(山域)ロシア、コーカサス山脈
(現地エージェント)ピルグリムツアーズ  (エージェントに払った費用)27000RUB(約900USD)
(他の隊員方)BORREとBARD(共にノルウェー人)、ジョニー(ロシア人現地ガイド)
(行動)3月30日:成田→モスクワ、31日:→ミネラルヌィボディ→AZAUのスキー場、4月1日〜3日:Adyr-su
谷スキー、4日Adyl-su谷スキー、5日チュゲトマウンテンでのスキー
    6日:→バレルハット、7日:休養、8日:エルブルース頂上往復、9日:AZAUスキー場へ下山、10日:ガ
ラパシ谷スキー、11日→ミネラルヌィボディ→モスクワ

(状況は厳しい)
 バレルハットに入った僕等を待っていたのは、良くない情報ばかりだった。まずこの日に頂上に向かった別の
ノルウェー人パーティーが氷の斜面で滑落して事故を起こしたらしい。一人は岩にぶつかり身体がバラバラにな
り、もう一人も重体だという。
 これは後日、死亡事故は誤報で、実際は1名の重症事故で済んだと分かったが、それでもこの時の僕等には
かなりのプレッシャーとなる事故であった。
 バレルに常駐している管理人に聞くと、エルブルースはまだガチガチ氷の山で、未だ今シーズンに登頂した者
はいないという。また一緒に登る予定だったノルウェー人のヴォルドが、高山病にやられアザウのスキー場に引
き返した。
 天気予報は悪天を告げている。もう残されたチャンスは少ないぞ。
 残ったガイドのジョニー、60歳のヴォーレを含む3人で、登頂ルートの作戦を立て直す。氷の壁を避け、通常
ルートのバスツーホフロックを大きく迂回したコースを取る事とした。これにより氷の壁を歩く距離は短くなるが、
今度はクレバスの危険が高いと言う。
 とにかくは天気予報がはずれ、もう一日の好天が来る事を期待して眠りにつく。

(氷の斜面を越えて)
 予定通り午前3時に起床。猛烈に寒いがこれは仕方が無い。本場ノルウェーでクロスカントリーの選手だった
ヴォーレはスキーで歩くのがすごく早い。暗闇の中必死でヴォーレの後を追いかけた。氷が出てきた標高430
0m地点でスキーをデポしアイゼンに代える。
 ここからは慎重に雪の乗った斜面を繋げて上部を目指す。硬い斜面にもう引き返そうと喉まで出る場面もあっ
たが、概ねスムーズに5050m地点のトラバース地点まで出た。こここからは双子峰エルブルースのコルであ
るサドルまで、東峰の南斜面をひたすらトラバースする事となる。氷の斜面は突破したが高度の影響が徐々に
出だした。メラピークに登ったばかりの僕は比較的元気で、サドルでは気持ちよく雲子ケースに巨大大キジを撃
つ。
 風の通り道のサドルでも風は強くない。天気予報は良い方向に外れた。まだもう少し天気が持ちそうだ。ただ
ウシバ峰の方向には巨大な積乱雲が出来てきている。あのドラゴン雲がこちらに来るまでに、安全地帯に下り
なければいけない。
 夏のシーズンならスキーが楽しそうな頂上斜面を越え、午後1時過ぎ無事ヨーロッパ最高点に到着した。僕等
は今年度最初のエルブルース登頂者になった。60歳のBORREは大喜びだ。僕も幸運に感謝する。

(ガスの中の下山)
 下りは登り以上に滑落に気をつけなければならないのは当然だ。予想通り徐々に天気は悪化し、視界は悪く
なってきた。しかしそこは僕のGPSとジョニーのルートファインディングにより確実に標高を下げる。標高4700
m付近の氷斜面を突破したら、後はスキーのデポ地を探すのみだ。スキーを履けばバレルハットまではあっと
言う間だった。
 この日は標高差2000m、行動時間12時間越えの厳しい一日となった。風も無く天気が午後までもってくれた
のは奇跡的だったとも思う。
 翌日には山には風が吹き出した。一日順応が遅れたBARDはもう登頂をあきらめるしかない。スキーを履いて
重荷を担ぎ氷河のスキー場をAZAUまで降りた。エルブルースの山麓がこんなに素敵なスキー場になっていたと
は知らなかった。

(さよならコーカサス山脈、そしてエベレストへ)
 翌日は予備日だった。ジョニーはサービスにもう一本ガラパシ谷の山スキーを案内してくれた。これも下部の
ガチガチ斜面を除けば、なかなか素敵な滑降だった。今回の旅では最高のスキーにセブンサミット登頂まで付
き、欲張りで恵まれた旅であった。
 山から下山すると快適なロッジでシャワーを浴びて、続いてビール、更にはウオッカから美味しいロシアの食
事まで揃っている。これも手馴れた現地エージェントをネットで見つけれたお陰でもある。インターネットは実に
有難い。
 しかも今回のスキー&登頂でエージェントに支払った費用は10万円にも満たない金額だった。その他飛行機
代とモスクワホテル代を入れてもこれはかなりお得だ。英語がしゃべれなければ辛いツアーになるかもしれない
が、語学力さえある方にはこの手の海外スキーは最高に面白いに違いないと思う。