エルブルース登山と氷河スキー其の@〜スキーするならコーカサス〜
次の狙いはセブンサミットの一つ、ヨーロッパ最高峰のエルブルースだ。
しかし4月上旬のこの時期はまだ山は凍っていて、登山には早いらしい。
しかし周辺山岳の氷河スキーには最適な時期だとも言う。
とにもかくにも欲張りな僕はスキーと登頂の両方を求めて一気にロシアに飛んだ。


コーカサス山脈は黒海とカスピ海の間にある。予想以上の素晴らしい場所だった


グルジアとの国境付近の山岳スキー。ここまでスキーに来る日本人はまずいない


AZAUスキー場のホテル、ネパールのバッティ茶店とは大違い


Adyr-su谷へのアプローチ


軍の払い下げ車両が大活躍


毎日が登って滑っての繰り返し


大滑降が連日続く


こちらはAdyl-su谷


エルブルースの向かい側、チュゲトマウンテンの頂上です


  エルブルーススキー登山其の@〜スキーするならコーカサスに来い〜

(日付)2009年3月30日(月)〜4月12日(日)
(山域)ロシア、コーカサス山脈
(現地エージェント)ピルグリムツアーズ  (エージェントに払った費用)27000RUB(約900USD)
(他の隊員方)ヴォーレとヴォルド(共にノルウェー人)、ジョニー(ロシア人現地ガイド)
(行動)3月30日:成田→モスクワ、31日:→ミネラルヌィボディ→AZAUのスキー場、4月1日〜3日:Adyr-su
谷スキー、4日Adyl-su谷スキー、5日チュゲトマウンテンでのスキー
   
(ネパール、日本、そしてロシアへ)
 メラピークの登山はこれまた楽ではなかった。予想以上の寒さにやられ、指先は軽い凍傷となり、帰りのキャ
ラバン中から足裏が痛み出す。
 これはどうも足裏が持病?のトレンチフット状態になってしまった様だ。メラピークからエルブルースまで1週
間しかない。引き続く登山の準備もある。ここは自らの持つ生命力を信じるしかない。あちこち飛行機移動しな
がら、同時に静養し準備を進める。
 30日にエアロフロートで成田からスキー持参でモスクワに飛んだ。モスクワ飛行場のトランジットでは今回の
旅で最も高級なホテルに泊まる。他にホテルが無いから仕方なく利用したのだが、わずか数時間の滞在で30
0USDだから驚く。
 モスクワから国内線でコーカサス地方ミネラルヌィボディの空港に飛んだ。空港では現地ガイドのジョニーが
出迎えてくれる。前日にエルブルースに登りに行き、頂上遥か下で氷壁に遮られ降りてきたばかりだと言う。エ
ルブルース登山にはまだ時期が早すぎるらしい。その分スキーが楽しめるとも言う。
 飛行場から車で5時間、エルブルース山の麓アザウのスキー場に着いた。ゴンドラリフトも設置された意外に
モダンなスキー場だ。ここで他のお客のノルウェー人2人と合流する。スキー場の素敵なホテルに泊まれて、ネ
パールでの登山と雲泥の違いだと思う。

(Adyr-su谷でスキー三昧)
 翌日古いジープでアディルス谷に移動する。どうやらグルジアとの国境にかなり近いらしく、軍隊の検問もあ
る。ソ連時代に作られた車両用リフトを経て狭い林道を行くが、しばらくして雪のため車が動けなくなった。その
後は軍隊の払い下げ車が我々を標高2300mに立つ素敵な営業ロッジまで運んでくれた。午後からさっそく近
くの氷河のある谷に登り、一本標高差800mほどの滑降を楽しむ。周囲は険しくかつ美しい山岳に囲まれてい
る。素敵なパウダースノーでまるでスキー雑誌の中の世界だと思った

 翌日は更に奥まで、氷河の谷を入り込んだ。この日は風も少ない。雪崩さえ気をつければスキー好適日だ。
先頭ラッセルはガイドのジョニーが皆引き受けてくれた。これななかなかに楽しい登高だ。標高3600mのグマ
チ峠まで上がりロッジまで豪快大滑降を楽しむ。
 翌日は更にアディルス谷の本谷氷河を詰めていった。稜線まで上がるとグルジアとの国境になる。外国人が
特別な許可無しに国境に至るのは禁止されているらしい。稜線手前の標高3500m地点で下山を決める。クレ
バスも無いし楽しいパウダー滑降だ。夜はロッジでロシア風の食事を楽しめるし、日本では味わえない恵まれた
スキーエリアに酔いしれた。

(お隣Adyl-su谷とチュゲトマウンテンでも)
 どうやら僕等のスキーは好天の周期に上手く当たったらしい。翌日も別の谷でロングツーリングスキーを楽し
んだ。現地ガイドのお陰で能率的かつ安全に氷河スキーを楽しめる。スキーとなれば連日の行動でも平気に頑
張れるのはどの国の人でも同じらしい。更にその翌日はスキー場のリフトを利用してチュゲトマウンテンに登り、
標高差1000mのパウダースキー滑降を2本楽しんだ。こんなに豪快にパウダーを食べたのは初めての事だと
思う。まさしくスキーするならコーカサスに来いという感じだ。
 ただこれらのルートは全てグルジアとの国境近くにあり、特別な許可を予めとっておかないと入れない場所ば
かりらしい。僕等も下山すると必ず軍隊からパスポートチェックを受けた。何でも軍隊は遠くから望遠鏡で常に
僕等のスキーを監視していたと言う。
 変な日本人が変なテレマークで、あちこちうろうろするのは、現地の山岳部隊にも良く知られていたのだよと
聞き、何だかくすぐったい気分になったりする。

(そしてついにエルブルースへ)
 コーカサスのスキーは僕の予想を遥かに超えて素晴らしいものだった。昼間に散々パウダーをいただき、夜
は快適なロッジで美味しい食事を食べ、シャワーを浴び、清潔なベッドで寝る。携帯で国際電話も通じる。ネパ
ールでストイックな登山をしてきた後だけに、エベレスト前に良い気分転換になった。快適な暮らしと毎日の楽し
いスキーで癒されたのか、メラピークでの凍傷の名残も徐々に回復した。
 1週間のスキー三昧の後、我々はやっとエルブルースに向かう事になった。好天期間はもう長くない感じだ。
麓のアザウスキー場からゴンドラリフトとロープウェー、更に雪上車を乗り継ぎ、ほとんど歩く事無くバレルハット
に入れた。